専門職倫理の誓
平成30年6月16日制定
前文
公益社団法人新潟県栄養士会(以下「本会」という。)は、かねてより栄養の科学とその実践の技術をもとに、食をとおして、ひとびとがよりよく生きることを保証する責務を付託された管理栄養士及び栄養士の団体として、職業倫理を確立し、これを会員ひとりひとりの日々の業務に息づく規範とすることに格段の意を用いてきた。およそ職業倫理は、専門職業人の本質に由来するものであって、専門職業人は、これに則って業務を行う限りで、職業に対する誇りを保ち、社会に対する責務を果たすことになる。職業倫理は、時代を超えて専門職業人を導く道標である。
同時に、職業倫理は、その職業にある者が時代の要請にいかにして応えるかという、職業の存在意義に及ぶ問いを、今を生きるわたしたちに投げかけるものでもある。ひとびとが食に求めるものは、日に日に複雑かつ多様化している。これらを受けとめて、ともに叶える道筋を指し示すことのできる専門職業人は、唯一、管理栄養士及び栄養士である。管理栄養士及び栄養士は、食をとおして、ひとびとと社会の、現在と未来に責任をもつ見地に立って、みずからの役割の重さを深く自覚しなければならない。
本会は、本会の管理栄養士及び栄養士が、ひとびとと同時代を共有しつつ、次代を展望してたしかな歩を進める専門職業人であるために、従来の「倫理規程」をもとに、2008 年9 月の第 15 回国際栄養士会議(International Congress of Dietetics)で採択された理念を盛り込み、新たに職業倫理の体系を編むこととした。
本会の管理栄養士及び栄養士が、食をとおして、ひとびとがよりよく生きることをたしかなものとする職責を胸に、栄養の科学とその実践の技術に基づく栄養の指導を行ううえでの倫理の規範を自らに課して、これを遵守することを広く社会に宣明すべく、ここに、本会の名をもって、専門職倫理の誓を定める。
誓の綱領
1 わたしたち管理栄養士及び栄養士は、食をとおして、ひとびとが、いつ、いかなるときも、喜びと尊厳をもって幸せに生きることを支え助ける使命を担い、その達成に最善を尽くします。
2 わたしたち管理栄養士及び栄養士は、ひとりひとりの食の営みに寄り添いながら、来るべき健やかな社会づくりに貢献し、そのために、同僚、専門職、その他の関係者と広く連携するとともに、その要となって協働の伸展に努めます。
3 わたしたち管理栄養士及び栄養士は、栄養の科学とその実践の技術により、食をとおして人の命を預かる職責を課された専門職として、生涯にわたりこれらの科学と技術の習得に努めるとともに、その進歩と発展を図り、その恩恵があらゆるひとびとに共有されるよう力を尽くします 。
誓の定め
わたしたち管理栄養士及び栄養士は、誓の綱領に基づき、専門職としての生涯をとおして次の定めを誠実に守ります。
《 ひとびとの願いとわたしたちの役割 》
1 管理栄養士及び栄養士は、喜び、いつくしみ、すこやかさ、その他ひとびとの食に託する願いをあますところなく受けとめ、願いを果たすひとりひとりの営みが尊厳あるよき生を開くよう最善の手立てを追究します。
《 自律の支援 》
2 管理栄養士及び栄養士は、ひとびとが食の営みを自ら律することを尊びながら、その最良の実りのために、栄養の指導をとおして、ひとりひとりに寄り添い、これを支え助けます。
《 多様性の尊重と公正な対応 》
3 管理栄養士及び栄養士は、多様な個性の共生のために、国籍、人種、宗教、思想、信条、門地、社会的地位、経済的状態、ライフスタイル、障がいの有無や内容、年齢、性別、性的指向などのいかんにとらわれることなく、正義の要求するところに従い、公正にひとびとに臨みます。
《 交流し共有する義務 》
4 管理栄養士及び栄養士は、栄養の指導で接するひとびととの対話その他の交流を欠かさないようにするとともに、指導に関しひとびととの認識の共有に努めます。
《 みずから臨み識別する義務 》
5 管理栄養士及び栄養士は、みずからひとびとに臨んで、その心身の状況や栄養の状態をつぶさに捉え見分けたうえで、栄養の指導にあたります。
《 連携の義務 》
6 管理栄養士及び栄養士は、栄養の指導が、保健医療、福祉、教育等の働きかけと密接に結びついて、ひとびとの食の営みに関する多様な需要をより包括的によりよく満たすものとなるよう、他の専門職その他の関係者と連携し、その要となって協働します。
《 受診等を勧める義務 》
7 管理栄養士及び栄養士は、栄養の指導を行ったひとの心身の状況、栄養の状態にかんがみ、医師その他の専門職による診療や保健指導等の専門的対処を要すると認めたときは、これら専門職への受診や相談等をそのひとに勧めます。
《 安全確保の義務 》
8 管理栄養士及び栄養士は、食の安全の確保に関し常に必要な注意を払うとともに、栄養の指導に際し、これにかかわる専門職その他の関係者の業務に、対象者の食の安全を損なうおそれのある事由を認めるときは、当該関係者との連携のもと、それによる被害等の発生を防ぐために必要な措置を講じます。
《 地域社会への責務 》
9 管理栄養士及び栄養士は、地域住民ひとりひとりの食の営みを支え育む地域づくりに参画するとともに、地域の食環境の整備とその最適な運用に取り組みます。
《 食文化の発展的継承と持続可能な社会への寄与 》
10 管理栄養士及び栄養士は、多様な食文化を尊重し、その保存と発展的継承に取り組むとともに、それをとおして培われる食生活のあり方と適切な環境の保全を礎とする持続可能な社会のあり方との調和を図ります。
《 公益活動の義務 》
11 管理栄養士及び栄養士は、日常業務と両立させながら、公益活動を行う義務を負います。
管理栄養士及び栄養士は、非常災害その他の事件や事故により不特定多数のひとびとが、相当期間において適正な食事摂取が不能または困難な状況に見舞われた場合などにおいて、専門性を生かして、必要な救援や救護の活動に取り組みます。
《 業務の求めに応じる義務 》
12 管理栄養士及び栄養士は、栄養の指導の求めがあった場合には、正当な理由のない限り、これを拒みません。
《 守秘義務 》
13 管理栄養士及び栄養士は、正当な理由のない限り、栄養の指導に関して知り得たひとの秘密を他に漏らしません。管理栄養士及び栄養士でなくなった後においても、この義務を守ります。
《 生涯研鑽の義務 》
14 管理栄養士及び栄養士は、学際的な統合科学である栄養学の実践者として、生涯にわたり研鑽に励み、高い専門的な知識と技能を維持し向上させます。
《 人格を培い開かれた存在となる義務 》
15 管理栄養士及び栄養士は、食をもって、命を癒やし、養い、もてなす職責を担うため、ひとりひとりの生きる営みの尊さに深く共感しうる豊かな心を培うよう努めます。 管理栄養士及び栄養士は、栄養の指導に関し、率直で誠実な態度と配慮に富んだ言動、そして、透明性のある業務をもって説明責任を果たし、信頼しうる開かれた専門職となるよう努めます。
《 品位の保持 》
16 管理栄養士及び栄養士は、生涯にわたり、法令に反する行為、業務に関する不正な行為、そして、これらに当たると否とにかかわらず、管理栄養士及び栄養士としての品位を損なう一切の行為に決して携わりません。
附則
この誓は、平成30年6月16日に制定する。
この誓の改廃は、総会の決議を経て行う。